2016年のDC法改正(2017年施行)により、3号被保険者もDCに加入できるようになりましたが、はっきり言ってDCに加入するメリットはほとんどありません。なぜメリットが無いのかを見てみましょう。
最初に、第3号被保険者とは、どのような方が対象なのでしょうか?
一般的には、サラリーマンの奥様で、専業主婦か、パートで働いている年収が130万円以下の方です。
正確には、第3号被保険者とは、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者(夫など)に扶養される配偶者の方(20歳以上60歳未満)が対象です。また、第2号被保険者とは、厚生年金保険の加入者(会社員等)及び共済組合の加入者(公務員等)です。
◆130万円の壁
本人の年収が130万円を超えると、資格を失います。
一般的に「130万円の壁」と言われていますが、130万円を超えると、第3号被保険者からはずれてしまい、同時に健康保険の扶養家族からもはずれてしまいます。第3号被保険者は年収130万円未満(一定の障がいの状態にある人は180万円未満)が条件です。
(注:2016年10月からは、特定の条件を満たす場合、8.8万円/月(106万円/年)を超えると、第2号被保険者になります。)
◆103万円の壁
パートにより得る収入は、通常給与所得となります。給与所得の金額は、年収から給与所得控除額を差し引いた残額です。給与所得控除額は最低65万円ですから、パートの収入金額が103万円以下(65万円プラス所得税の基礎控除額38万円)で、ほかに所得がなければ所得税はかかりません。
もともと、年収が103万円以下の場合は、所得税が0円ですので、所得控除の恩恵はありません。129万円近くの年収の方は、若干所得税控除のメリットがあります。以下の所得税、住民税の計算方法を参考にしてください。
ちなみに、最大の年収129万円で、DCの積立を26万円/年行った場合は、以下の計算で、所得税が13,000円軽減されます。
(129万円 - 103万円)× 5% = 1.3万円
住民税は同様に、約2.6万円軽減されます。
(129万円 - 103万円)× 10.025% ≒ 2.6万円
注:今回の改正で最大、年間27.6万円(月額2.3万円)まで積み立てることができます
所得税・住民税の計算式
年収 | 所得税 | 住民税(横浜市の場合) |
100万円以下 | 0円 | 0円 |
100万円 ~ 103万円以下 | 0円 |
3,300円 |
103万円 ~ 130万円以下 | 5% |
3,300円 + 10.025% |
税制のメリットでも書いたように、利息、配当、分配金、売却益全て非課税です。
但し、受取り時のデメリットには注意が必要です。あまりにも収益が多いと、受取り時に課税される可能性があります。
一時金で受取る場合は、退職所得扱い、分割で受取る場合は、公的年金扱いとなり、雑所得となります。いずれの場合も、退職所得控除や、公的年金控除を超える場合は、課税対象となります。
個人型DCは、自分自身の積み立てたお金を引き出す時に、所得税として課税されるという最大の問題点があります。
特に分割で受取る場合、他の年金と合算すると年金控除額を超える人も、発生すると考えられます。
また、運用益は非課税としても、最終的に受取りで所得として課税されるのであれば、運用益の非課税メリットは半減します。DC資産が大きく増えても、受取り時に課税されるのであれば、真の意味で運用益が非課税とは言えません。
もちろん、それぞれの控除額以下の金額であれば、実質所得税は0円となります。詳細は確定拠出年金税制のメリットを参照ください。
確定拠出年金は、受取時の税金まで含めて考え、運用する必要がありますね。
似たような非課税制度としてNISAがありますが、NISAの場合は、運用益は全て非課税で、受取り時の所得課税もありません。以下にDCとNISAの比較表を作成しましたので、参考にしてください。
※ NISA制度は2024年1月から大幅改正が実施されます。
比較項目 | 確定拠出年金 (第3号の場合) | NISA (成人NISA) |
対象者 | 20歳~60歳 | 20歳以上 |
年収 | 130万円以下 | 無制限 |
拠出上限 | 27.6万円/年 |
120万円/年 |
受取年齢 | 60歳以上~70歳未満 |
随時 |
投資対象 | 投資信託、年金保険、定期預金 |
投資信託、株、ETF、REIT |
積立金所得控除 | 所得控除対象 |
対象外 |
運用益 | 非課税 |
非課税 |
受取時課税 | 一時金は退職所得扱い、分割は年金所得扱い |
非課税 |
NISAは2024年から恒久化されます。上限額も年間360万円と大幅に改善されます。
上記の表を見てもわかるように、第3号被保険者の場合、単純にDCとNISAを比較するなら、NISAの方が優れていると言えます。
もちろん、DCも所得控除、退職金控除、年金控除の範囲で運用すれば、非課税のメリットはありますので、うまく使い分ける事が重要です。
第3号被保険者、特に年収103万円以下の方は、以下のようにDCのメリットを享受できません。場合によってはデメリットとなる危険性があります。それぞれのライフプランに合った非課税制度を、適切に選択する能力が求められています。